何重ものバリケードの先に、土囊(どのう)を積んだ詰め所が見えた。銃を下げた国軍の兵士が周囲を見張り、緊張感が漂う。

 ミャンマー中部マンダレーの国軍の検問所。今月、車で近くを通ると、案内役の男性運転手が震えた声で私に言った。「ここは絶対に通りたくない」

  • 少数民族の蜂起から1年……ミャンマー内戦さらに拡大、窮地の避難民

 運転手が通行を拒んだのは、すぐ向こうが戦場だからだ。マンダレーから数キロ先のマダヤ郡区では6月から民主派勢力と国軍の戦闘が続いている。

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ミャンマー中部マンダレー市内から戦闘が続くマダヤ郡区へとつながる道には、土囊(どのう)が積まれた国軍の詰め所が見えた=2024年10月15日、マンダレー、笠原真撮影

 ミャンマーでは2021年に国軍がクーデターで全権を掌握後、国軍支配に反発した市民らが武装化し、民主派勢力として国軍と武力闘争を続けてきた。その内戦が拡大したのは昨年10月。北東部シャン州の複数の少数民族武装勢力が蜂起したのを機に、民主派と少数民族勢力が協力して、国軍を攻撃し始めた。

 武装勢力側は支配地を広げ、約150万人が暮らすミャンマー第2の都市マンダレーへの進攻が危惧されるまでになった。マンダレー中心部には国軍司令部があり、仮に陥落すれば、国軍の衝撃は計り知れな

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戦闘の足音を感じ、「いつでも避難できるよう準備している」と話す露天商の女性。多くの市民が同様の不安を抱えている=2024年10月14日、ミャンマー中部マンダレー、笠原真撮影

 マンダレー市内に夫と息子2人と暮らす露天商の女性(43)は「貴重品をかばんに詰め、いつでも避難できるよう準備している」と話す。9月には民主派が国軍司令部を狙って砲撃し、爆音が響いた。「街が戦場に変わる『警告』のように感じた」と言う。

 「何の目的だ? 取材ならやめなさい」

 住民の男性(40)にはそう…

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